特殊な和音
ここまでのコードは、根音と積んだ音程から名前を付けてきました。それとは別に、使われ方や響きに名前が付いた和音があります。クラシックの和声で使われるものと、4度を積む和音、ネットで名前が広まった和音を見ます。
ナポリの六
主に短調 (C を主音にするならキー Cm) で使う和音です。主音の半音上の D♭ を根音にした長三和音 (♭Ⅱ) を、第3音の F をいちばん下にして弾きます。分数コードで書くと D♭/F です。
Cm C · C · E♭ · G Ⅰm
ボタンでコードを選ぶと鳴ります。「和音」「分散」で聞き比べられます。
D♭/F のあとに Ⅴ7 の G7 へ進み、Cm に戻るのが基本の使い方です。D♭ が C へ半音で下がり、キーの外の音から戻ってくるような、劇的な響きになります。
「六」は、クラシックの和声で第1転回形を「六の和音」と呼ぶことから来ています (いちばん下の F から根音の D♭ までが6度)。18世紀にイタリアのナポリで活躍した作曲家たちがよく使ったことから、この名前が付きました。
増六の和音
キー C (またはキー Cm) で、A♭ と F♯ のあいだが増6度 (10つ先) になるように組んだ和音です。A♭ は半音下の G へ、F♯ は半音上の G へ動いて、G のオクターブへ外向きに広がって解決します。
イタリアの六 A♭ · C · F♯ 3つの音だけ
ボタンでコードを選ぶと鳴ります。「和音」「分散」で聞き比べられます。
A♭・C・F♯ の3つが共通で、4つ目の音で名前が分かれます。何も足さないものをイタリアの六、D を足したものをフランスの六、E♭ を足したものをドイツの六と呼びます。国の名前の由来ははっきりしておらず、その国の作曲家だけが使ったという意味ではありません。
ドイツの六と A♭7
ドイツの六の F♯ は G♭ と同じ鍵なので、ドイツの六は A♭7 (A♭・C・E♭・G♭) と同じ音です。A♭7 は、セカンダリードミナントと裏コードの記事で見た D7 (Ⅴ7/Ⅴ) の裏コードでもあり、どちらも G へ進みます。書き方 (F♯ か G♭ か) で、どちらの役割で使っているかを区別します。
4度堆積
3度ではなく、完全4度を積み重ねた和音を4度堆積 (クオータル・ハーモニー) と呼びます。C から4度を3つ積むと C・F・B♭・E♭ です。
4度堆積 C · F · B♭ · E♭ Cm7(11) から第5音を抜いた音
ボタンでコードを選ぶと鳴ります。「和音」「分散」で聞き比べられます。
3度で積んでいないので長短がはっきりせず、浮いたような響きになります。C・F・B♭・E♭ を C から数え直すと、E♭ が短3度、B♭ が短7度、F が11度なので、Cm7(11) から第5音を抜いたコードとしても読めます。
E・A・D・G の4度3つの上に長3度で B を乗せた形は、マイルス・デイヴィスの曲『So What』で使われたことからSo What コードと呼ばれます。
ブラックアダーコード
Ⅴ の音の上に、Ⅳ の増三和音を乗せた和音です。キー C なら、G の上に F・A・C♯ を乗せた Faug/G です。日本のネットでブラックアダーコードと呼ばれるようになりました。
Faug/G G · C♯ · F · A Ⅳaug/Ⅴ
ボタンでコードを選ぶと鳴ります。「和音」「分散」で聞き比べられます。
G から数えると、F が短7度、A が長9度、C♯ が増11度です。G7(9,♯11) から第3音と第5音を抜いた音と同じです。G・A・C♯・F はどれも、全音 (2つ先) だけで並ぶ全音音階の音なので、どこへ向かうのかわからない、ふわっとした響きになります。ベースが Ⅴ なので、G7 と同じように C へ進めることができます。
名前の由来
イギリスのコメディ番組『ブラックアダー』の曲で、この和音が印象的に使われていたことが名前の由来と言われています。クラシックの和声の用語ではなく、Ⅳaug/Ⅴ と度数で書くこともあります。
一覧
| 名前 | キー C での音 (下から) |
|---|---|
| ナポリの六 | F・A♭・D♭ |
| イタリアの六 | A♭・C・F♯ |
| フランスの六 | A♭・C・D・F♯ |
| ドイツの六 | A♭・C・E♭・F♯ |
| ブラックアダーコード | G・F・A・C♯ |
練習
キーと和音の名前から鍵を探してください。いちばん下の音 (ベース) をいちばん下で押します。ほかの音は、オクターブと押す順番を問いません。
キー C のナポリの六 を押して 0 / 3 · 連続 0
コード名の音を、鍵盤で全部押します。